アイヌ刺繍、それはあなたを守る文様。

北海道や東北、北方領土に暮らしてきたアイヌ民族には、独特の文化があります。

衣服や道具に美しい文様をほどこすのもそのひとつ。

自然、動物、そして人の手で作られたものにもカムイ(神)が宿ると考えて、その大切なものにウェン・カムイ(悪い神)が入り込まないようにと木彫りや刺繍で渦巻きやとげの文様をつけたのです。

過酷な環境で暮らしていた人々にとってそれは重要な意味をもちます。

衣服の背中、襟、袖口、すそと開いた部分にはとがったとげの文様や魔物の目を回す渦巻きが、病や災いが入り込むのを防ぐことを念じて刺繍されました。アイヌの女性たちにとって、愛する人を守る刺繍をさすことは大切な仕事だったのです。

 

現代に受け継がれてきたアイヌ文様は、地域によってさまざまなかたちをたどりながらもその芸術性と美しさから新たに注目されています。

しかし、単なるデザインとしてだけではなく、文様に生きる「誰かを守りたい」という思いこそがアイヌ刺繍の命であるとモレウ工房は考え、作品づくりを行っています。

 

モレウ工房のアイヌ刺繍

 

アイヌ刺繍にはさまざまな種類があります。

 

地域によって、そして集落や家によって文様にはたくさんの特徴があり、昔はその刺繍を見ただけで刺し手がどの地域のどの家の出自かわかったといいます。

現在でも、北海道の中で「この特徴はこのあたり」「この刺し方はこの地域」とある程度の分類が可能であり、そこで受け継がれてきた伝統があります。

 

モレウ工房は、それらの伝統を学びながら現代の暮らしに生かすことを大切に考えています。

身近に使う道具に、いつも着るお気に入りのシャツに、

「あなたを守る、ただ一つの刺繍」

があること。それは、小さなことかもしれませんが、心のどこかをあたため、少しだけ安心することにつながると思うのです。

身近などんなものにも文様をほどこしたアイヌの人々にならい、大切なものや自分自身を守る美しい文様を身に着けてみませんか。